大阪府・西心斎橋 SHOT BAR ARGUS(ショットバー・アーガス)

さて、私はというと、せっかくウイスキーラリーに参加するのだから、その飲み方を落合さんに委ねてみようと思っていた。落合さんにその旨を告げると、「じゃあ、まず『ザ・マッカラン12年』のロックを飲んで、さらに『ザ・マッカラン・ファインオーク12年』をハイボールで飲ってみてはどうでしょう」と薦めてくれた。 落合さんの論理は、強(きつ)いものを飲んでから緩(ゆる)いものへと進んだ方がいいというもの。「ボウモア」や「ラフロイグ」は初心者にはクセが強すぎるからとの理由からあまり薦めないのだとか。それよりはシェリー樽の特徴的な香りのある「ザ・マッカラン」をまずロックで飲んでから、爽快感を求めてハイボールへ進むのがいいのだと言う。そして「色々飲んだ後に、アイラ島のウイスキーを提案するのだ」と話してくれた。 「ザ・マッカラン」は、ハロッズのウイスキー読本の中で、「シングルモルトのロールスロイス」とまで称されたウイスキー。1824年にハイランド・スペイサイドの聖コロンバの丘にて創業されて以来、世界中のモルトファンから愛され続けている。「ザ・マッカラン12年」は、重く、深い香りが漂う。その味は甘みがあり、とろみが舌を伝わっていく。ロックで味わい、舌と喉を慣らしながら一杯目の余韻を楽しむ。その余韻は長く続き、フィニッシュは華やかな香りを感じた。 そうしていると、すでに落合さんは二杯目の酒へと取りかかろうとしている。二杯目はその「ザ・マッカラン」の中でも異質なもの。ヨーロピアンオークのシェリー樽とアメリカンオークのシェリー樽、バーボン樽の3つの原酒をヴァッティングした「ザ・マッカラン・ファインオーク12年」のソーダ割りである。この二杯目の酒を落合さんは「めちゃくちゃ飲みやすい」と評している。

「アーガス」では、スタンダードのものを色々と試してほしいとの思いから、あえて年数の高い酒は置いていないそうだ。それでも約500種もあるのだから、相当なものである。落合さん曰く「作り手の意思を尊重し、紹介するのがバーテンダーの仕事」らしい。それだけにこの後に出てくるものが楽しみでもあった。 結局、この日は「ザ・マッカラン・ファインオーク」の後に、「白州12年」のハイボールと「山崎12年」の水割りを飲んだ。落合さんが最後に「山崎」を持って来たのは、昨年4つの樽の違いを表した「山崎」が発売された(「シェリーカスク」「パンチョン」「バーボンバレル」「ミズナラ」)ことによる。「あえて4つの樽の『山崎』を発売したのは、サントリーがもっと『山崎』を知ってもらいたいと考えたからではないでしょうか」。そう言いながら落合さんは「山崎」で、私のウイスキーラリーを締めくくらせた。まさに「作り手の意思を尊重し、紹介するのがバーテンダーの仕事」と言っていた通りである。 「アーガス」では、今回のウイスキーラリーを7月下旬からやっていたそうだ。私が行ったお盆前の時期で、すでに60人ほどがプレゼントをゲットしていると話していた。「このキャンペーンは4種と8種のコースがあるんですが、たいていの人は1回でクリアしています。8種類を1回で飲む人も少なくないですよ。うちではカードを持って帰る人は少ないぐらいじゃないですかね」。落合さんは常連、新規を問わず、「ウイスキーラリーに参加しませんか？」と薦めているそうである。時には薦めていなくてもウイスキー通が面白がって、これに参加し、ロック、ハーフロック、水割り、ハイボールなどの多様な楽しみ方をする人もいるらしい。そのうちの何人かは私のように選択を落合さんに委ねているのかもしれない｡ 「ザ・マッカラン12年」→「ザ・マッカランン・ファインオーク12年」→「白州12年」→「山崎12年」の所に印を押してもらいながら私はちょっぴり考えた。あと1回来て、8種コースのプレゼントをゲットすべきかどうかと…。8月は盆休みがあり、さらに原稿〆切がたて込んでいる。それなら4種コースと決め、ここでウイスキーラリーをやめるのも得策かもしれない。 落合さんの話では、印を押した今回のカードをサントリーに送るので、9月には「ザ・マッカラン・オリジナルコインケース」が届くそうだ。それを受け取りに来て、また落合さんの薦める酒を飲んでみよう。その時には暑さも少しやわらぎ、もう少しはゆっくりできるのではないか。「アーガス」自慢のフードを味わいながら、一杯飲むのもオツなものである。そんなことを思いながら、この店でのウイスキーラリーを私なりに締めてみた。