曽我和弘のBARのトレンドを読み解く!

酒を楽しみたい・・・。そう思ったとき、人はバーという止まり木を探す。そしてバーテンダーと話をしながら酒なる嗜好品を味わっていくのだ。そんな酒の文化を創り出してきたバーも千差万別。名物のカクテルで勝負している店もあれば、バーテンダーの人柄や店の雰囲気で人を集めているところもある。数ある名物バーを探し、今宵はコレを飲んでみたい。

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新作カクテルで懐かしいあの頃を思い出す
大阪府・曽根崎新地
BAR PREMIER(バー・プルミエ)

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BAR PREMIER(バー・プルミエ) 写真

懐かしい味がするカクテル

まだ世に出ぬ商品を、他人(ひと)より先に味わえるのが取材者の特権かも知れない。交配させて作った新種の果実を売り出す前年に食したり、発売前のお菓子を試食したり、はたまた発表前の料理を味わったりとケースは様々だが、一般の人がまだ食べていないことがわかると、なぜかしらちょっぴり優越感に浸ってしまうものだ。 北新地(大阪)にある「BAR PREMIER(バー・プルミエ)」でもまだ店で出していないカクテルを飲むことができた。「プルミエ」の店主・山本智恵美さんが考案した「ミドリーニ」は、メロンリキュールの「MIDORI(ミドリ)」を用いたもの。「ミドリ」といえば、1971年に来日したアメリカ人のバーテンダーが、その前身となる「ヘルメスメロンリキュール」を大絶賛したことに始まり、サントリーがカクテル大国・アメリカに通用するブランドとして開発したものだ。それまで海外では、ケミカルのような味をしたメロンフレーバーはあっても、これほどフルーティでナチュラルな味わいのものはなく、その完成度の高さに著名なバーテンダーが唸ったと伝えられている。そのため今では海外のバーで当たり前のように、この「ミドリ」がラインナップされるようになっている。つまり我が国が世界に誇るメロンリキュールなのである。

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山本さんもこの「ミドリ」を高く評価しているバーテンダーのひとり。山本さんによれば、「ミドリ」は、「香りも味もメロンそのもので、色合いがきれい。本当にクオリティの高いリキュールです」との評を持つ。「プルミエ」でもそれを使ったフローズンカクテルがよく出るそうで、「爽快感からか、ことに夏場には活躍する」と話している。 そんな山本さんが「曽我さんが来るので、昨日考えたんですよ」と披露してくれたのが新作カクテル「ミドリーニ」だ。このお酒は、まずグラスにクラッシュアイスを入れて、冷やすことから始まる。グラスが冷えるのを待ちながら、一方でミキシンググラスに「ミドリ」50ml、カルピス20mlとかちわり氷を入れて、冷えるまでほんの少しだけ置く。その後、シャンパン(「アンリオ」)を適量(約40ml)注いで軽くステアする。ストレーナーをかけて、クラッシュアイスを取り出したグラスに注いで完成する。飾りとしてメロンを加えた季節のフルーツを添えて提供するのだ。最後にシャンパンを注ぐ理由は、これを入れなかったら甘みが強くなりすぎるから。「ミドリ」とカルピスを合わせると、糖分が高いのでシャンパンを加えることで酸味を付け、甘さを緩和しているそうだ。 山本さんが「大人のクリームソーダみたいでしょ」と表現するだけあって、どこか懐しい味がする。それもそのはずで、山本さんは前日に自分の子供の頃をイメージして、カクテルを創作したらしい。「私にとっては『ミドリ』は懐かしい味がするんです。ほら、ミドリを炭酸で割ると、メロンソーダになるでしょ。あれ、あれ」と話しかけてくる。山本さんは子供の頃に喫茶店をやりたいと思ったことがあるそうだ。「子供の時にチョコレートパフェが好きだったんですよ。だから自分が喫茶店を経営したら、毎日でも食べられるのにと子供心に思ったんですよね(笑)」。その気持ちが高じたのか、大人になってサービス業に就きたいと思うようになった。「お酒って飲むと陽気になれるでしょ。お酒を通して会話も弾むし、毎日いろんな人の話が聞けるし…。この仕事は本当に楽しいですよ」と言う山本さんだが、新作「ミドリーニ」を飲んでいると、何だかこちらまで子供心に戻ったようで嬉しくなってしまう。「ミドリ」を使うというテーマがあり、それに懐かしいカルピスの味とシャンパンを合わせようと思ったのが発想の原点だと言うが、この甘めのカクテルを飲んでいくうちに、なぜか山本さんの可愛らしい子供時代に出会えたような気さえする。

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ウィスキーの樽材で造られたバー

新地本通りに位置する「プルミエ」は、2003年11月にオープンした女性バーテンダーのみで運営している珍しいバーである。女性のみといっても昨今流行のガールズバーの類ではなく、れっきとしたオーセンティックバーだ。接客業が好きだったという山本さんがバーテンダーを志し、「ベッソ」で修業を積んだ後に、縁のあった北新地で店を始めた。女性ひとりでもふらりと来れるような店づくりをしたいと思って「プルミエ」を作ったのである。だから山本さん曰く「女性に優しく、男性に厳しい(?!)店」だとか。男性に厳しいというのは冗談だが、女性のみならノーチャージになっており、その点でも山本さんが女性客を優遇しているのがわかる。 女性が営むだけあって店には随所に女性らしさが施されている。全体的に木造りの店なのだが、床と壁は、サントリーの山崎蒸溜所にあった樽材が使われている。立派なカウンターも国産のミズナラ材で、床とカウンター下の足置きには炭を敷き、マイナスイオン効果を持たせている。「炭を敷き詰めることで、リラックス効果が得られるようで、椅子に腰掛けているのに、靴を脱いで飲む人が多いんですよ」と山本さんは炭の効果を説明してくれた。山本さんの話では、さすがに消臭効果も抜群のようで、シガーの会を催した時でさえ、翌日には臭いが抜けていたという。

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木造りの店だと、えてして男性的なイメージが強くなる。しかし、「プルミエ」を女性らしい店だと思うのは、あえて入口横の壁やクローゼット、天井などに丸みを持たせているからだろう。「女性客をと思っていても、初めは全然来ませんでした。それが口コミで伝わり、一人増え、二人増え、今では女性ひとりでも行ける店として認知され始めたようです」。 もともと酒が飲めず、バーで働きだしてから酒の味を覚えたと話す山本さんだが、バーテンダーとしての腕前はなかなかのもの。「ベッソ」の佐藤さんに仕込まれているだけに面白いカクテルを創作する。その代表が「SOLARE(ソラーレ)〜陽だまり〜」。コエンザイムQ10が流行った2006年に誕生したもので、2006サントリーカクテルアワード・ショートカクテル部門最優秀賞を受賞している。ちなみにレシピは、白桃とコエンザイムQ10のお酒30ml、ディサローノ・アマレット10ml、マカディア10ml、フレッシュオレンジジュース10mlである。白桃風味が利いている一杯で、やさいの味わいが特徴。甘いが、重くはなく、軽くて飲みやすい感じに仕上がっている。グラスに刺された飾りは大根とラズベリーで造作したもので、太陽をイメージしているのだとか。「店内にポップを置いていると、『賞を獲ったっものを飲ませてよ』というお客さんが多いですね。私はこの『ソラーレ』をビタミンドリンクのような感じで飲んでほしいですよ」と山本さんは微笑みながら語ってくれた。 バーの数は沢山あれど、女性のみで運営する所は少ない。男性は山本さん達の優しい感じに接したくてこの店へ訪れる。また女性客は、安心感を求めて「プルミエ」を目指すようだ。そういえば、女性の持つ優しさや可愛いらしさ、そんなエッセンスが「ミドリ」を使った新作「ミドリーニ」にもしっかりと詰まっていた。

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BAR PREMIER(バー・プルミエ)

お店情報
  • 住所大阪市北区曽根崎新地1-2-20 ノースタウンビル2階
  • TEL06-6343-8611
  • 営業時間17:30〜翌3:00(土曜日は〜0:00)
  • 定休日日祝日
メニュー
  • ミドリーニ1300円
  • ソラーレ1200円
  • モスコミュール1200円
  • ビール900円〜
  • ウィスキー1000円〜
  • グラスシャンパン1500円
  • 山崎12年1200円
  • 白州12年1200円

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