山崎 THE YAMAZAKI SINGLE MALT WHISKY

樽づくりのブレンダー

  • 山崎ならではの、原酒つくりわけ。

    山崎の水で仕込まれた麦汁は、発酵を経て醪(もろみ)となります。山崎蒸溜所の発酵槽は、木桶発酵槽とステンレス発酵槽の二種類。とくに木桶では木の保温効果により、発酵がよく進みます。また、蒸溜所に棲む乳酸菌などのミクロフローラが活躍し、成分豊かな醪が生まれます。

    次に、醪は蒸溜されて無色透明の原酒、ニューポットとなります。使われる蒸溜釜は、初溜と再溜、それぞれ八種すべて異なる形状。さらに、加熱は直火と間接の二つを使いわけるため、原酒の酒質は、力強く重厚なものから、軽快なものまで、多岐にわたります。

    長い歳月をかけて熟成していくニューポット。樽の大きさや形によって、育つ香味も異なります。また、同じ種類の樽でも貯蔵庫の上段・中段・下段、手前か奥かなど、置かれた位置でも微妙な違いが出ます。 世界でも類を見ない、原酒のつくりわけがあって、山崎の複雑で繊細な味わいがうまれるのです。

  • 樽も山崎の原料?

    山崎蒸溜所のモルト原酒を貯蔵する樽は、一種類ではありません。バーボンの貯蔵に一度だけ使われた樽を再利用する「バーレル」は一八〇リットルと容積が小さく、内側を強く焼いているので熟成が速く進むのが特徴。バニラ様の甘やかな原酒を生みます。

    そのバーレルを容積二三〇リットルに組み直した「ホッグスヘッド」や、さらに大容量の北米産ホワイトオークの新樽「パンチョン」は熟成が緩やか。コモンオークの「シェリー樽」は、オロロソを三年間熟成させたもので、果実やチョコレート風味の原酒を生みます。そして、日本独自ともいえる「ミズナラ樽」の原酒は白檀(ビャクダン)、伽羅(きゃら)を想わせるオリエンタルな香味が特徴です。

    樽の原料であるオークの種類や、容積、山崎の貯蔵樽となるまでの来歴も異なるそれぞれの樽。そこで熟成した多様な味わいのモルトを重ね合わせることで、山崎は生まれる。いわば、樽も原料のひとつなのです。

  • 国破れて、ミズナラ樽あり。

    山崎のキーモルトのひとつとして欠かせない、ミズナラ樽による長期熟成モルト。その誕生に、ひとつの偶然があったことをご存知ですか?

    一九四一年に始まった太平洋戦争。その戦中から敗戦後にかけて、シェリー樽などの輸入が困難となりました。そのとき山崎蒸溜所が目をつけたのが、高級家具の材料などに使われていた「ミズナラ」。北海道が主産地のオークの一種です。ミズナラは材質的に原酒が漏れやすく、その製樽作業は苦労の連続だったといいます。

    そして当時は、ミズナラ樽の原酒はブレンダーから、必ずしも高い評価を得ていなかったのですが、白檀や伽羅を想わせるその香味は、数十年のときを経て、いまでは海外のブレンダーやウイスキー通からも高い評価を得ています。ひとつの偶然によって生まれたミズナラ樽。しかし、その樽から生まれるモルト原酒は、山崎にとって、なくてはならないものなのです。

  • 樽づくり、親子三代記。

    海外からの輸入だけに頼らず、いずれは貯蔵樽も自分たちでつくっていきたい。そんな鳥井信治郎の思いに応えるように、この国の洋樽づくりの礎を築いた男がいました。立山源亟(げんのじょう)。若き日に桶職人として修行を積んだ彼は、一九三四年にサントリー専属の洋樽職人としての道を歩みはじめます。

    しかし、当時の日本に、洋樽に関する情報はほぼ皆無。源亟は、輸入された樽を見て、ほぼ独学で樽づくりを学んでいきます。製樽に必要な道具までを自分たちでつくるという、きわめて困難な道のりでした。

    そして、その探究心と匠の技は、息子の登へ。さらに孫の隆一(現・近江クーパレジ社長)へ受け継がれていきます。原酒が樽で味わいを深めるように、樽づくりの技も長い歳月を経て深められてきたのです。現在、製樽まで行なっているウイスキーメーカーは世界的にも稀。それが、山崎のこだわりです。

  • ブレンディングという魔法。

    山崎は、山崎蒸溜所のモルト原酒だけでつくられています。でも、そこには精妙につくりわけられた、さまざまなモルト原酒が絶妙なバランスで溶け込んでいるのです。だから山崎の味わいは奥深く、複雑なのです。

    山崎蒸溜所の敷地内にあるブレンダー室で、ウイスキーの品質管理や商品開発に取り組むブレンダーたち。彼らがテイスティングする原酒は一日一〇〇種類以上。多い時には三〇〇種類におよびます。また、原酒のピークがいつかを見極め、未来に向けてどのような原酒が必要かを判断するのも彼らの重要な仕事です。

    サントリーが所有する数十万樽の原酒を把握し、さまざまな商品を生み出すには、ブレンダーたちのチームワークも重要。そして、原酒の仕込みから商品化までに長い歳月を要するウイスキーづくりは「過去や未来のブレンダーとの共同作業」ともいえるでしょう。 それらのあらゆる要素が重なりあってはじめて、山崎ならではの味わいが生み出されるのです。