BAR業態様 限定

バーテンダーズ アイ

「こだわり」、それは酒の道を追求するバーテンダーに必要な資質と思われがちでる。しかし「こだわり」は本来、固執、妄執など執着を意味するネガティブな言葉。バーテンダーには、およそ相応しくない。バーテンダーの仕事は、酒を振る舞う手法に専心する…つまり「凝らす」ことにある。プロフェッショナルとしての思い思いの「凝りよう」が、接客やインテリアなどの細部に沁み渡り、至福のグラスに宿り、静謐なBARの空気を産み出しているのだ。
今月は、そんなバーテンダーのオフタイムを演出するプライベートの一軒をご教授願った。

今回のテーマ
プライベートの一軒

酒仙堂 オーナー 樋渡洋氏

月島厳選ホルモン たから屋

バーテンダーと聞くと夜のイメージばかりが先行しがちだが、現在のバーテンダーはそうとも限らない。 実業団選手顔負けのタイムでフルマラソンを駆けるランナーあり、ツール・ド・フランスばりに山岳地を疾走するサイクリストあり…銀座の隠れ家BAR「酒仙堂」のオーナー樋渡洋氏は、トライアスロンとトレールランに凝っている。休日は、東京の西にある高尾山を登り、小仏峠から陣馬山を抜け、武蔵五日市駅まで40キロ超を縦走。武蔵五日市周辺の温泉につかった後に都心に戻るという。そんな帰路に立ち寄るのが、月島の「たから屋」。ここでホルモンを平らげる。

「トレーニングの後は、本来、30分以内に補給しないと疲労が残りますから」とスタミナを補充する。この店は、以前「キムの家」という屋号だった頃から通っているという。休日には、ちょっとした行列が出来ることもある人気店だ。

「割と廉価だという点もありますし、上ハラミは絶品ですね。マルチョー(小腸)は脂が乗っているので大好き。コラーゲンもたっぷりなので、必ずオーダーします」。ホルモンは食べても太りにくく、胃もたれもせず、さっぱり食べられる利点があると語る。逆にカルビやロースは、ほとんど頼まないのだとか。

トライアスロンは元々、氏の奥様が1999年頃から始めたとか。それに倣い氏も2002年からスタート。昨年も、28回大会を数える全日本トライアスロン宮古島大会に出場している。

実は銀座のバーテンダー諸氏が集まった呑み会において、なりゆきで「江戸前トライアスロン大会」参加が決定。普段、トライアスロンに親しみのないバーテンダー氏も含め、集団で出場した過去もあるという。その大会の打ち上げも、この「たから屋」だったとか。時として、名バーテンダーに出会えるかもしれない(?)そんなホルモン屋である。

  • 月島厳選ホルモン たから屋
    住所:東京都中央区月島3-27-1 / TEL:03-3536-4129
酒仙堂
月島厳選ホルモン たから屋

アナハイム新橋 店長 山元涼子氏

ガリンペイロ 宮古島

全日本トライアスロン宮古島大会が話題に上ったから…ではないが、宮古島のBARを一軒…。

山元氏はここ数年、休暇で宮古島を訪れる機会が多い。以前、宮古島を訪ねる際、知人から「会っておいたほうが良いよ」と紹介されたのが、宮古島で人気のダイニングバー「ボックリーのちょっき」のオーナー。

「Barボックリーのチョッキ」は、宮古島のダイニングバーの草分け的存在。地元では「ぼっくり」と通称されている。オープン当初から南国フルーツを贅沢に使ったカクテルや自然派ワインにこだわる。

東京在住のオーナーに挨拶を済ませ、宮古島へ。当時、「ぼっくり」を任されていたのが、砂田文生(すなだふみお)氏。砂田氏の人柄に魅せられたせいもあり、以来、宮古島を訪れる際は立ち寄る一軒となっていた。その氏が2011年3月31日に独立開業したのが、「ガリンペイロ」。「四時から呑めるニクイ店」というキャッチの元、ワイン酒場として人気を博している。

「開店祝いに定価15万円する人体模型を贈ったので、その様子を見に」と今夏、新店舗にも足を運んだ。模型は、「ガリンペイロ待望の新人」として「タッチャン」と命名され、店のセキュリティ担当となっているとか。なかなか、愛嬌のあるバーである。

ショットバーっぽい雰囲気なので、料理の種類もさほど多くはないというが、「文生さんの人柄に惹かれます」とのこと。「ついつい宮古島なので、日常を忘れて気兼ねなく呑み、それでも誰も自分を知っている人がいない。それが楽ですねぇ」と山元氏。

諸氏、偶然、宮古島でほろ酔いの山元氏を見つけたとしても、知らぬふりをお願いしたい。

  • ガリンペイロ
    住所:宮古島市平良字西里567 / TEL:0980-72-4532
アナハイム新橋
ガリンペイロ 宮古島

アトリウム銀座 ジェネラルマネジャー 清水智恵子氏

インペリアルラウンジ アクア

清水氏が、プライベートの空間を愉しむのは、格調高い雰囲気と上質なインテリアを備えた帝国ホテル最上階のラウンジ「インペリアルラウンジ アクア」だ。昼は緑あふれる日比谷公園を望みながら、語らいのひとときを過ごし、夜は、ピアノの生演奏をバックに、ゆったりとした気分で座り心地の良い椅子に身を委ね、カクテルやハードリカーなどが愉しめる。そんなラウンジを、清水氏は日曜の夕刻に訪ねては、ゆったりとした時間を過ごす。

「休日、お食事の前に一時間ぐらい寄らせて頂く…そんなことが多いです。リラックスして、いいお酒を飲みたいなっていう時に、肩の力がふっと抜けて行くような、あの落ち着いた空間が好きなんです」。

アクアは、確かに「さすが帝国ホテル」と唸らざるを得ないような充実した時間を提供してくれる。その空間は、我々のような市井の客だけではなく、やはり一流のバーテンダーにも、都心における清涼剤を与えてくれるに違いない。

「結婚式や会食の二次会のグループが入る前のゆったりした時間が、自分だけの時間という気分で、アクアの雰囲気を愉しませてもらっています」。

アクアのどんな点に惹かれるかと訊ねると「すべてですね」と落ち着いて応える氏。業務中、凛々しいバーテンダー姿の清水氏は、プライベートでは見惚れるほど清楚で女性的な装いに身を包んでいる。そんなバーテンダー氏が、高級ラウンジで寛ぐ姿は、映画のワンシーンのようである…そんな想像をさせしてしまう瀟洒なラウンジだ。

アトリウム銀座
インペリアルラウンジ アクア
取材記者:たまさぶろ プロフィール

東京都渋谷区出身。千葉県立四街道高等学校、立教大学文学部英米文学科卒。「週刊宝石」、音楽雑誌などの編集者を務めた後に渡米。ニューヨーク大学およびニューヨーク市立大学にてジャーナリズム、創作を学ぶ。Berlitz Translation Services Inc., やCNN Inc.本社勤務などを経て、帰国。「月刊プレイボーイ」、「男の隠れ家」などへの寄稿を含め、これまでに訪れたことのあるバーは日本だけで600軒を超える。

最近の著書は「【東京】ゆとりを愉しむ至福のBAR」

著書

撮影:斉藤美春